本の購入・定期購読のお申込み
twitter
facebook
instagram

旅行読売出版社トップ › トピックス › 旅する喫茶店 Vol.15

トピックス

旅する喫茶店 Vol.16

調度品はアンティーク調。カウンター席の上が吹き抜けになっている

築100年の土蔵は
静寂に包まれて

茶房ひし伊
(北海道・函館市)
            

土蔵を改装して喫茶を営む茶房ひし伊は、函館山を望み港にも近い住宅街にある。蔵は1921年築というから、100年近くが過ぎている。もともとは質店で、質草を保管するために建てた蔵。もっと古い1905年築の土蔵が隣接し、こちらでは現在、きものの古着などを販売している。             

喫茶を始めたのは1982年。2層になっていた内部に吹き抜けを設けたが、改装は必要最低限にとどめたようだ。柱や梁がむき出しになった空間に、小さな窓から差し込む光が柔らかな陰影を投げかけている。席はカウンターに七つとテーブルが三つ。「靴を脱ぎ足をのばしておくつろぎください」(店長の入村里奈枝さん)と、2階には畳敷きの席もある。             

土壁は余計な音を吸い込むのだろうか。コーヒーカップとソーサーが擦れる音、新しい客の靴音……今必要な音だけを残して。会話も小声で十分だ。             

土壁は、長い歴史を見てきた。質店時代には石川啄木の妻・節子も訪れ、喫茶となってからはロケの合間に高倉健も姿を見せたという。健さんご指定のカウンターの隅っこ席を目当てに訪れるファンもいる。             

土蔵の温もりに包まれて、もう少しここにいよう。

   

文/渡辺貴由 写真/川村勲

                
2階は喫茶店としては珍しい畳敷き
                
コーヒー540円、あずき白玉のミニパフェとコーヒーのセット920円
              
茶房ひし伊
函館市宝来町9-4
TEL.0138・27・3300
営業:11時〜17時30分/無休
交通:函館市電宝来町停留所から徒歩2分
このページのトップへ