運河のほとりの
石蔵にクラシックカー
(北海道・小樽市)
北の大地の秋の夕暮れは早い。小樽運河のガス灯に明かりが灯る頃、ポツリポツリと雨が落ちてきた。冷たい雨風を避けるため、近くにある石造りの倉庫を活用したプレスカフェへ向かった。1895年に建造された旧渋澤倉庫の前には、クラシックカーが2台置かれていた。店内にも1台あり、書棚には車の雑誌や書籍が並ぶ。
車は売りもので、MGやMINIなど1970年代のイギリス車だ。「もとは車の販売が中心で、喫茶はおまけのような感じでした」と店主の稲葉圭計(よしかず)さん。札幌から小樽へ移転した13年前、信頼ある生産者の豆を使ったスペシャルティコーヒーを楽しめる喫茶店として再スタートした。
この店のもう一つの特徴は、インドカリーやスパゲティなどの食事。北インド風チキンカリー(1080円)は、13種のスパイスと3種のハーブを使って7時間煮込んでいるという。色鮮やかなニンジンやブロッコリーなどが添えられ、食欲をそそる。コーヒーはモカ、マンデリン、イタリアン(各480円)のほか、苦味や香りの異なる3種のブレンドもある。
すっかり夜の帳(とばり)の下りた店外に出た。車のボンネットの上で雨粒がカフェの明かりに照らされ光っている。周りに誰もいないのを確認して、俳優気取りでポーズをとってみた。
文・写真/中野秀俊
北海道小樽市色内3-3-21
TEL.0134・24・8028
営業:11時30分〜22時/木曜休
交通:函館線小樽駅から徒歩15分
- 11_ 北国のノスタルジック喫茶 喫茶マロン(青森・青森市)
- 10_ 寺町通の極上フレンチトースト スマート珈琲店(京都・中京区)
- 09_ 老舗温泉宿が温泉水でいれた珈琲 温泉珈琲 水屋(新潟・湯沢町)
- 08_ 釧路の盛衰を知る隠れ家的純喫茶 仏蘭西茶館(北海道・釧路市)
- 07_ 地下に広がるレトロな音楽空間 新宿らんぶる(東京・新宿区)
- 06_ 松本民芸家具に囲まれる 珈琲まるも(長野・松本市)
- 05_ 日曜のみ開く隠れ家 Sumika livingサンデーカフェ(群馬・みなかみ町)
- 04_ 繁華街で開かれる静謐な“夜会” 喫茶ソワレ(京都・下京区)
- 03_ 昭和を色濃く残す“劇場” 名曲喫茶 ライオン(東京・渋谷区)
- 02_ カルチェ・ラタンのカフェの香り 進々堂(京都・左京区)
- 01_ 谷中の町が育て、受け継いだ一軒 カヤバ珈琲(東京・台東区)