3月号「旅の記憶」は中島悟さんでした。
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レーサー引退後の1993年、
家族で行ったヨーロッパ旅行の1コマ
(ドイツのローテンブルクにて)
「レーサーを引退した翌日からトレーニングは一切
やめました」
と現役時と変わらない穏やかな口調で語った。
国内で無敵を誇り、日本人ドライバーにF1への道を
切り開き、F1ブームをもたらしたモ
ータースポーツ
界の功労者はどこまでもプロフ
ェッショナルだった。
30代半ばでのF1デビューは、小柄な中嶋さんに
とって体力的なハンデがあったことだろう。
真夏の炎天下、最高時速が300`を越えること
も
あるレースを2時間続ける体力や精神力は並大抵では
あるまい。
F1デビュー時のチームメートはあのアイルトン・セナ
である。
プロのドライバーとしてけじめをつけた後も変わらない
のはドライブが好きなこと。
自ら率いるレーシングチームの大会、仕事での打ち合わせ、
プライベートの旅などあらゆる場面で車を駆る。
「電車は年に1回乗るかどうか」と笑う。
「海外
では1日1000`走ることもあるけど、全く
苦になりませんね」。
海より山が好きだから、自宅が
ある愛知県からのドライブは岐阜や長野、北陸方面が
多いという。
景色を楽しみながらひたすら走る。
とはいえ、体
力的な衰えを自覚してきた今は、年齢
なりのドライブを心掛けているという。
最後でちょっとだけ
“普通のおじさん”の一面を見せて
くれた。
※本誌の連載「旅の記憶」で紹介し切れなかった話を
中心に
構成しています。
【元F1ドライバー】中嶋悟(なかじまさとる)さん
1953年2月愛知県出身。73年、レース活動を始め、
77年にFJ1300シリーズで全戦優勝。
その後、全日本F2選手権で5回年間優勝。
87年、日本人初のフルエントリードライバーとして
F1世界選手権にデ
ビュー。91年、引退。
現在、ナカジマレーシングの総監督
としてスーパー
フォーミュラなどに参戦している。